2013年10月8日火曜日

日本政府 野田政権 2

慰安婦問題 野田―李政権で幻の政治決着 昨秋交渉

 【箱田哲也】日本と韓国間の懸案となっている従軍慰安婦問題で、両国政府が昨年秋、被害者へのおわびや人道支援などで最終的に解決させることで合意しかけていたことが双方の関係者の話で明らかになった。野田佳彦首相が元慰安婦に送る手紙の文言で最終的な詰めに入っていたが、衆院の解散で動きは止まったという。

 日本政府関係者によると安倍政権発足後は慰安婦問題は協議されていない。慰安婦問題をめぐっては韓国の憲法裁判所が一昨年8月、韓国政府が日本と交渉しないことを違憲と判断。同年12月に京都であった日韓首脳会談はこの問題で決裂した。日本政府は野田首相や斎藤勁(つよし)・官房副長官が外務省幹部と検討を重ね、昨年3月、佐々江賢一郎・外務次官を訪韓させた。

 当時の複数の日韓政府高官によると、次官は(1)政府代表としての駐韓日本大使による元慰安婦へのおわび(2)野田首相が李明博(イミョンバク)大統領と会談し、人道的措置を説明(3)償い金などの人道的措置への100%政府資金による支出――の3点を提案した。

 日本政府は慰安婦問題について、日韓請求権協定により解決済みとの立場。これを守りつつ人道支援を探るぎりぎりの内容だった。

 韓国政府はいったん提案を拒否したが、昨年8月に李大統領が竹島を訪問し、関係が悪化した後、慰安婦問題の協議が活発化。同10月からは李大統領が側近を日本に送り、日本案を土台に、元慰安婦らへの首相の手紙の中身について話し合ったが、妥結直前で衆院解散となったという。

 官邸で交渉の中心的役割を担った斎藤氏は「もう少し時間があれば合意できた」と述べ、日韓の新政権で協議を続けるべきだと訴える。韓国の現朴槿恵(パククネ)政権の当局者からは「残った調整作業で折り合えるなら昨年の動きを結実させることも可能」との声が出ている。朝日新聞は野田氏側に取材を申し入れたが、7日現在回答はない。

朝日 2013.10.8