2013年10月5日土曜日

FJ 16 Q&A

2 日本軍は女性を保護したか?

1938年3月4日の陸軍省副官通牒「軍慰安所従業婦等募集に関する件」は、中国にいる派遣軍(北支那方面軍・中支那派遣軍)が選定した業者が日本内地で誘拐まがいの方法で「慰安婦」を集めるという事件が起きたため、今後は、派遣軍は、業者の選定を厳密にし、募集にあたっては憲兵・警察との連繋を緊密にするように指示しています。



この通牒が意味していることはつぎのふたつのいずれかでしょう。ひとつは、以後、この通牒に従って、派遣軍の指示により、日本・台湾・朝鮮では憲兵・警察と連繋を緊密にして、軍が選定した業者による「慰安婦」の徴募が行なわれたということです。



しかし、朝鮮・台湾では、業者による人身売買・誘拐などによる女性たちの国外移送や満21歳未満の女性の移送が多発したことは事実です。これは犯罪あるいは違法行為ですが、そうすると、憲兵・警察は共犯者ということになります。派遣軍または朝鮮・台湾の憲兵・警察は、業者を利用して女性たちを集めさせているので、主犯ということにもなるでしょう。



もうひとつの場合ですが、日本内地では連携を厳密にして違法行為を取り締まったが、朝鮮・台湾では黙認した、ということも考えられます。日本内地で問題が起こると日本軍の威信を傷つけることになると通牒は指摘しているので、この方が実情に近いかもしれません。しかし、この場合の責任も同じでしょう。



この通牒が出された後で起こったことを含めて考えれば、この通牒から読み取れることは、このふたつ以外には考えられません。



この通牒は、その後の「慰安婦」徴募について多大な影響を与えたものであり、とりわけ軍が「慰安婦」徴募を統制していた証拠(徴募における軍の深い関与を明示するもの)です。「軍が業者の乱暴な募集を止めさせた証拠だ」という、一部にある読み方は誤りというほかありません。



また、慰安所は軍のために、軍の施設として、軍がつくったものです。業者に慰安所の経営をまかせる場合も、慰安所の運営について軍は監督・統制をしています。慰安所は、居住の自由、外出の自由、廃業の自由(自由廃業)、拒否する自由がない性奴隷制制度でした。このような施設をつくり、そこに女性たちを閉じ込めて、軍人の性の相手をさせたのですから、軍には重大な責任があることになります。



軍がこのような施設をつくらなければ、女性に対する重大な人権侵害はそもそも起こらなかったわけですから、「良い関与」というのはありえないことになるでしょう。